HOUSE VISION、海と毒薬

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東京の湾岸、青海地区でやっているHOUSE VISIONという住宅の未来を考える展覧会に行った。1800円も入場料を取る割には残念な展示会だった。以下、展示内容のメモ。

1[住の先へ]LIXIL×伊東豊雄…よく分からなかった。

2[移動とエネルギーの家]Honda×藤本壮介…Hondaの次世代モビリティはすごかったが、それに対応する空間がよく分からない感じになっていた。断面図を見ると3層のレイヤー構造のコンセプトがよく分かるのだが、実空間がレイヤー性をほぼ感じられないくらいオープンで弱かった。

3[地域社会圏]未来生活研究会×山本理顕…これは面白かった。かつてバックミンスター・フラーやパオロ・ソレリ等がアーコロジー(巨大な建築物をひとつの町として、その中にひとつの社会を作り、生態系を構築する)としての建築を実験していたが、それを現実的なサイズに落とし込んだという感じ。地域社会圏という数十世帯を1単位とする共同生活のありかたを提唱。

4[数寄の家]住友林業×杉本博司…よく分からない。自慢の素材を使った和室のようだったけれども、フェイク感がすごい。

5[家具の家]無印良品×坂茂…これは坂茂の代表作の、家具自体を構造体にして住宅を設計したものの進化版。もともと、モジュール性や工業製品としての住宅を念頭に造られたコンセプトだったであろうから、無印良品との相性はとてもよく、分かりやすくまとまっていた。

6[極上の間]TOTO・YKK AP×成瀬友梨・猪熊純…意味不明だった。

7[編集の家]蔦屋書店×東京R不動産…これは一番面白かった。デザインの素人である一般の人でも、住宅作りを楽しめるような基盤を作ろうとしていた。かつて、石山修武が、住宅を構成するパーツの値段や入手経路を暴きながら、素人でも住宅を造れるという社会を作ろうとした「秋葉原感覚で住宅を考える」にも通じるものがあった。提案されていた住宅サンプルが、複数のデザインテイストがぐちゃっと組み合わされたものだったのも良かった。デザインを統一してシンプルな美を出していく、そぎ落とすタイプの抽象表現は、プロでなければ難しいやり方だけれども、複数のテイストをぐちゃぐちゃとまぜていって、複合させていくことで結果的にその人のテイストを抽象化して表現する方法は、開かれたデザインメソッドで良い。

総合ディレクターの原研哉が、未来の住宅を現実的に考えていくために、住宅メーカーと組んで、産業的な視点をもってディレクションした結果、こういう形の展覧会になったのは分かるのだけど、結果的に出来た空間は、よく分からないものが多かった。自分があまり興味ないだけなのかも、しれないが…。

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展覧会を見終わった後は、少し本屋に寄って、帰宅した。目黒川の桜は満開で、多くの人出があった。毎年のことだけれども、桜の白さに驚かされる。いつまでも、桜はピンク色だという思い込みが抜けず、実際に桜の咲く季節になってみると、思ったよりずっと白いなと思う…。

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帰宅して、購入した山本直樹の漫画「レッド 7巻」を読む。連合赤軍として革命運動に身を投じた青年達の話。6巻からだいぶ時間が空いたので、また話を忘れており、前巻を読み直す。

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その後、kindleでセール中だった遠藤周作「海と毒薬」を読んだ。タイトルしか知らなかったが、200円で安かったので購入。kindleストアは週替わりでセールをやっているので、適当に目についたものをふらっと購入している。
内容は、戦時中、米軍捕虜の生体実験手術に関わった医師達の物語だった。登場人物の殆どが「どうしようもなかった」「どうでもいい」という諦念のかたまりのような存在で、葛藤が描かれているというより、「もう諦めたのになぜかまだ苦しい…」という処理できない暗さが全体をつつんでいた。これはどういう人に向けられた小説なのか知らないけれども、自分はこの暗さと読後感が気持ちよいと思った…。他人の苦しみで癒されるというのは、人の業のひとつだけど逆らえない…。

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