月別アーカイブ: 2015年12月

John Hoyland

newport-street-facade-144

from Newport street gallery

Newport Street Galleryという、わりと最近できたダミアン・ハーストが運営するギャラリーに行った。John Hoylandというイギリスの抽象画家の展示をやっており、巨大なサイズで大胆かつ明快に色面を切り分けていく表現が非常にダイナミックで気持ち良く、素晴らしかった。ギャラリーの空間自体も、倉庫の大空間を生かした、真っ白で明るい空間に、各部屋をつなぐ開口や上下の吹き抜けがザクザクと穿たれているもので、それ自体、抽象絵画のようなリズムがあって、その中に強い色彩が淡々と置かれている様が強烈だった。

たぶん一枚だけ見ても、あまり印象に残らなかったのではと思うが、この最小限の形状が、見慣れないスケールで連続して、大空間を気持ち良く満たしているのがあまりにも良かったので、何度も部屋を行ったり来たりして、見ていた。

gallery-1-kioyar-ltd-photo-by-prudence-cuming-associates gallery-4-kioyar-ltd-photo-by-prudence-cuming-associates gallery-5-into-6-kioyar-ltd-photo-by-prudence-cuming-associates dhc-8011-11-9-65-mr dhc-7134-9-11-68-mr

dhc-7309-advance-town-29-3-80-mr

from Newport street gallery website

RISK

Margateというイギリス東の端にある街のTurner Comtemporaryという美術館に行った。RISKと題された展示をやっており、そのテーマ通り、芸術家がリスクをどのように作品の題材として捉えてきたかというものだった。

EZY1899_engine Marina-Abramovic-1000px.-jpg

飛行機を炎上させて、その中に防火服を着た作者が搭乗していくという謎の映像や、弓を引き合う男女の映像など、なんというかリスクを直接的に扱った作品が目に付いた。一緒に行っていた友人と、「リスクですね」などと感想を言いあっていたが、それ以外、言いようが無かった。けれどよくわからない面白さがあった。

他にも何か脚立の上から、積み上がったダンボールの上にダイブして、できた大きな凹みを展示してあるものなど謎な作品が結構あった。

その中に紛れて、グルスキーやリヒターなどの作品もあり、それらはリスクとどのような関係にあるのかは分からなかったのだが、テーマ関係なしに、一見して美しいと感じるのはさすがだとは思った。

オノ・ヨーコのパフォーマンスの代表作であるCut Pieceの記録映像も展示されていた。これは若かりし頃のオノヨーコが舞台に無言で座り込んでいて、そこに観客がひとりずつ上がっていって、傍のハサミで服を少しずつ切っていくというパフォーマンスなのだが、やはり強烈な緊張感があり、面白かった。

Yoko-Ono

from Turner Comtemporary website

ミュンヘン

昨日、今日とMunichに居た。街中を見るような時間が無かったし、移動などすべて用意されたものに同乗していただけなので、街の記憶がほとんどない。同行していた人によると、ミュンヘンはベルリンのようにあまり国際化されていないし、まだ古いドイツの感じが多く残っている場所なのだということだった。ベルリンに比べればどの都市もそのように見えるのではないかと思った。

Ai WeiWei

RAで開催されているAI WeiWei展に行った。会期終了が迫っていたが、非常に人気が高く、チケットが買えない状況が発生していたため、美術館側が、最後の数日間は24時間営業するという措置を取り、同僚のかたがそのチケットを入手してくれた。深夜1時くらいに展示を見るというのは初めてのことだったが、その時間帯にもかかわらずかなり多くの人がおり、関心の高さがうかがえた。

dsc_0166_23392176090_o dsc_0167_23319898419_o dsc_0168_23661760376_o dsc_0171_23687866555_o

アイ・ウェイウェイは、周知のように中国人作家でありながら中国社会を批判する非常にドキュメント性の高い作品を作り続けている。数万本の鉄骨を使って作られた波のような立体作品があり、それは中国内陸で大地震が起きた時、手抜き工事のために、多くの建物が倒壊し、本来ならばあり得ない規模の被害・死者を出したことに対してのメッセージとして、倒壊した建物から、むき出しになった鉄骨を一本一本回収し、人の手で打ち直して真っ直ぐにするという作業を数万本分、行って作り上げたというもので、異常な迫力があった。その様子を撮影した映像も上映されており、何人もの市民が協力して、歪みまくった鉄骨を回収、偏執的なまでに叩き上げて直線にしていく作業が記録されていた。ウェイウェイ氏は、自分が中国当局に逮捕されて投獄されていた2、3年の期間にも、その作業が止まっていなかったことに驚いたと話していた。

他には、中国の伝統的な木工技術を駆使したアンティーク家具をコラージュした立体作品も多く展示されており、そうした最高レベルの工芸技術がかつてあったにもかかわらず、現代の中国は、手抜き工事など、粗悪品の代名詞にもなっていることへの対比が示されていた。

氏の基本的な姿勢としては、そうしたかつての中国への憧憬を胸に、それを破壊したのは政府であると断定して、攻撃的な作品でもって批判を続けるというものなのだが、基本的には中国固有の社会背景に根差すものなので、他国人である自分にはこれらの作品を同じ強度で受容することはできない。ただ作品からは、明らかにこの人が異常に怒っているということだけは伝わってくる。訴えている内容は非常にシリアスなのだが、その表現があまりに過剰なので、怒りが突き抜けていて、心地良いとさえ感じる不思議がある。深夜にもかかわらず大量の人が観賞に訪れているように、氏の作品は、世界的に人気が高いようなのだが、パンクを生んだイギリスの人たちは怒りや反抗に対して惹きつけられるものがあるのだろうかとも思った。

sushi samba

会社の取引先の主催によるクリスマス会が開かれ、セントラルの寿司屋に行った。SUSHI SAMBAという名前で、寿司とブラジル料理を提供するという良くわからないレストラン。互いを変に混ぜたようなメニューではなく、日本食もブラジル料理もどちらもちゃんとしたものを出しているようで、味はとてもおいしかった。一緒に行った同僚はハマチのカマにいたく感動していたようだった。

dsc_0156_23513560681_o

Calder

Tate ModernにAlexander Calderの展示を観に行った。カルダーは、やじろべえのようにバランスを取りながら形を変えていく、動く彫刻・モビールを発明したことで知られている。最初期の、針金を使って作られた線的な彫刻や、二次元のキャンバスの前に、振り子のような幾何学形状が吊り下げられたものなど、実際に見るのは初めてだったものが多くあり、二次元と三次元の間を模索し続けていた変遷がとても良くわかった。ランダムに振れる振り子に対して、観客がボトルやカンなどをその軌道上に設置し、振り子に衝突させて生まれる音や、変則的なリズムを楽しむというインスタレーションのようなものもあり、動く彫刻を、音という方面にも拡張させていたとは知らなかったので、面白かった。後半の部屋には巨大なモビールが数多く設置されており、モンドリアンの影響下にある初期のものから、どんどん魚のような有機的な形になっていった後期のものまで、どれも見ていて飽きなかった。
T00541_10

calderportrait2

from Tate Modern website

その後にWhite CubeにてTight rope walkという名の展示を見た。展示のテーマは正直良くわからなかったのだが、具象のような抽象のような中間的な作風の絵画に的を絞ったキュレーションだったように見えた。現代の作家に混じって、マティスやピカソ、デュシャンなどの近代の巨匠作品も混ぜられており、100年分くらいの画家の作品が同一テーマで見られるのは面白かった。線が暴れている感じの絵に妙に目がいった。

068e1b35b61559e05df49e2a68e3c557_0

from White cube website

59a92dcb06b68b289941047d8286b2fa_0

Tracey Emin

59a92dcb06b68b289941047d8286b2fa_2

Georg Baselitz