月別アーカイブ: 2013年1月

新しいメモ

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ひとつ前のブログ(2011-2012)は記事が画面全体にばらっと散るようなデザインのものを採用したが、複数カラムになっているために、記事を一気に読むときに、ひとつの画面の中で上下に行ったり来たりしなければならないのが嫌だったので、今回のブログはシングルカラムにした。特に凝ったことももうしたくなかったので、ブログエンジンWordPressのデフォルトテーマ「Twenty Twelve」をベースに、余計なものをコリコリと削ったデザインにした。

写真はカスタマイズ前のTwenty Twelve。

サーモントラウト

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クリス・アンダーソンの「MAKERS」を読んだ。3Dプリンタや切削器、レーザーカッターなど、高価だった産業用の製造機器が、どんどん一般大衆に開かれていったことと、ニッチなニーズを汲み上げられるネットの発達によって可能となった、21世紀の産業革命とも呼べる次世代のDIYムーブメントやベンチャービジネスについての詳しい事例が数多く載っている。

このクリス・アンダーソンという人は、もろにヒッピームーブメントに傾倒していた人らしく、この本からは、製造業の未来を語るという以上に、数々の楽しいニッチな起業事例を紹介しながら、「普通の人が、好きな仕事だけをやって、好きなように生きていける時代がやってくる」ということを強く言っている。そのテーマは、70年代に、レイモンド・マンゴーが「就職しないで生きるには」という本で主張していたことと通底しているように思えた。

「就職しないで生きるには」を自分は就職してから読んだが、この本は、ニート的な働かない生き方の指南書ではなくて、自分だけの仕事を見つけて、自分で考えて働くことができれば人生は自由に楽しくなるという事を言っている啓蒙書で、作者が職に何度も失敗しながらも、自分のペースにあった仕事を自ら作り出していく過程のことを書いていた…。この頃はネットもなく、ニッチなニーズは簡単には見つからないし、やりたいアイデアがあってもそれを具現化したり人に知ってもらう手段がなかった。でもMAKERSの時代にはそれが出来る基盤がもう整っている。「MAKERS」では、自分が楽しんで働けるやり方で、生きていける人がもっと増える社会が、ユートピアではなく、現実になる期待に、この作者が凄くワクワクしている感はよく分かった。この本を読んで、よしと飛べた何人かの人はそちら側に行けるだろうと思う。この手の本を読んだ直後は気分が高揚していたはずなのに、時間が経つとそれが挫折感にすり変わっていた事が何度あっただろう。

ドコモ定食

正月に見た、格差と働き方の番組の中では、木暮太一という人がこんな事を言っていた。
・雇用制度がぶっ壊れきった現状、単一企業にずっと養ってもらえるという考えは幻想でしかなくなってしまった。それではダメだということで起業や転職の関心が高まっているが、多くの普通の人にとってそれはリスクが大きすぎる。
・問題なのはシングルインカムに頼った生活をすることなのだから、結婚以外のリスクヘッジの方法として副業の在り方を考え直すべき。今すぐ起業、とかでなく、10年くらいかけて自分のセカンドジョブを育てていける働き方はできないか。
・人は1年でできることを過剰評価し、10年でできることを過小評価する。10年かければセカンドジョブは育つ。
(この人が言っていたセカンドジョブという単語は初めて聞いたが、週末起業の延長のようでありつつ、主業と副業でなく、どちらかにプライオリティをおかずに、単純に、2つめの仕事という意味のようだ…。)

話のおおまかな筋は納得できる。もしそういう流れが主流になれば、おそらく働く上での態度も変わってくると思う。一般に、多くの企業人は、低評価や解雇を恐れて、会社や上司に対して「本当に言いたいこと」や「挑戦的なこと」を言わなくなる傾向にあると言われている。特に伝統的な日本企業だと、そのリスクを取らなくても会社はなんとなく回っていくので、リスクのバランスを考えると、その選択をしないという人が多いという結果に対して、何ら不思議なところはない。でもダブルインカム状態にある人は、ある程度保険が効いている状態にあるので、ひるまずに何かを言えるようになる可能性はある。
これは単に収入面だけではなく、精神面にもあてはまり、例えば会社活動とは別に、独自に芸術活動などを行っている人など、アイデンティティの置き場所を2カ所に分散できれば、片方でうちひしがれても気持ちが壊れずに済むかもしれない。

失うもののない裸一貫で突っ込んでいける人間は確かに強いが、それを出来る人は限られているので、もっと多くの人に可能性の開かれる、2つ3つの堰を持つ生き方を模索しましょうという話だったように感じた…。これからどう生きるか…。

ポリ

正月の深夜にニッポンのジレンマという番組を観た。30歳代の若手の社会学者とか批評家などが集まって話し合いをする番組で、議題は「格差を超えて 僕らの新たな働き方」というものだった。最初はなんとなく眺めていたのだが、とても面白く、最後まで観た。

宇野常寛氏が話していたエピソードが一番強く印象に残った。氏はかつて会社で働いていた頃、交渉して週休3日にしてもらったらしい。最低限生きるための収入を得、3日の休みは研究活動に充てていたという。これは面白い働き方だと思った。週の中で働く時間をコントロールするには、フリーターという選択肢しかないと思っていたが、「交渉してみたらできた」という事で、正規に働きつつ、研究時間も確保した行動力に目から鱗が落ちた…。