サーモントラウト

_DSC6168

クリス・アンダーソンの「MAKERS」を読んだ。3Dプリンタや切削器、レーザーカッターなど、高価だった産業用の製造機器が、どんどん一般大衆に開かれていったことと、ニッチなニーズを汲み上げられるネットの発達によって可能となった、21世紀の産業革命とも呼べる次世代のDIYムーブメントやベンチャービジネスについての詳しい事例が数多く載っている。

このクリス・アンダーソンという人は、もろにヒッピームーブメントに傾倒していた人らしく、この本からは、製造業の未来を語るという以上に、数々の楽しいニッチな起業事例を紹介しながら、「普通の人が、好きな仕事だけをやって、好きなように生きていける時代がやってくる」ということを強く言っている。そのテーマは、70年代に、レイモンド・マンゴーが「就職しないで生きるには」という本で主張していたことと通底しているように思えた。

「就職しないで生きるには」を自分は就職してから読んだが、この本は、ニート的な働かない生き方の指南書ではなくて、自分だけの仕事を見つけて、自分で考えて働くことができれば人生は自由に楽しくなるという事を言っている啓蒙書で、作者が職に何度も失敗しながらも、自分のペースにあった仕事を自ら作り出していく過程のことを書いていた…。この頃はネットもなく、ニッチなニーズは簡単には見つからないし、やりたいアイデアがあってもそれを具現化したり人に知ってもらう手段がなかった。でもMAKERSの時代にはそれが出来る基盤がもう整っている。「MAKERS」では、自分が楽しんで働けるやり方で、生きていける人がもっと増える社会が、ユートピアではなく、現実になる期待に、この作者が凄くワクワクしている感はよく分かった。この本を読んで、よしと飛べた何人かの人はそちら側に行けるだろうと思う。この手の本を読んだ直後は気分が高揚していたはずなのに、時間が経つとそれが挫折感にすり変わっていた事が何度あっただろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA