2日目。朝早くに、アスプルンド(および共同設計者のレヴェレンツ)の最も有名な設計作品である森の葬祭場(Woodland Cemetery, Skogskyrkogården)に行った。ストックホルム郊外にある巨大な共同墓地で、世界遺産にも登録されている。広大な敷地内に火葬場、礼拝堂、復活の大聖堂など、いくつかの主要な建造物が点在しているのだが、今日はいくつかの葬儀が行われることになっているらしいため、そのどれにも立ち入ることはできなかった。ただ墓地内は誰でも自由に出入りできるようになっており、散歩道のようにも使われていた。
すでに多くの著作などで言われているように、正門を抜けてから、ゆるやかな丘を登り、火葬場を抜けて、墓標の並ぶ森の中に至るまでの流れ、リズムが非常に静かで感傷的だった。
アスプルンド自身の墓もここにある。
礼拝堂に続く門の上部にはレリーフがあり、その中に「今日は私、明日はあなた」という死者からの言葉がラテン語で書かれている。これはその内容の強度、短さから墓碑銘として割と有名なフレーズらしい。確かに簡潔で深く響く。自分が墓碑銘を必要とするときがあれば、これを採用したい。「今日はあなた、明日は私」という逆の言葉が墓地の正門に書かれていたらしいが、見逃した。
この墓地は建物それ自体もさることながら、墓場と森が完全に一体化していることが特徴になっている。垂直に林立する全長30-50mはあろう樹木に対して、40-60cmくらいの小さな墓標がランダムに置かれていて、そのコントラストが際立っていた。自分の感覚では、墓地というものは、一区画いくらで土地が分譲され、その小さな区画の中に代々が収まっていくというスタイルだが、ここでは、そのような区切りがなく、ひとつの森を全員が共有しているといった感じで、簡単な目印としてささやかに墓標が置かれているものの、皆が大きな森に還っていくという死生観が見てとれた。
とはいえ、人は死後のスタイルさえそれぞれなので、区画化されているエリアも少しあった。また、こことは別に、ひとつの丘が散骨の森となっていた。そこには墓標すらなく、他に比べ樹木の密度が高く、あえて大きく手入れもされていないような少し荒々しい森の姿があった。