The Beginner’s Guide

The Beginner’s Guideという妙なゲームをやった。

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ゲームなのかドキュメンタリーなのかよく分からない作品なのだが、ストーリーは、「Codaという人物が2008年から2011年にかけて作成した、どれも完成していないように見えるいくつかの個人的なゲームを、その友人であるDaveyという語り手がひとつひとつ意味を読み解きながら解説していく」というもので、プレイヤーは実際にそのCoda氏の残したゲームを、Daveyのナレーションとともに体験していくことになる。この、ゲームとプレイヤーに加えて、ゲームの外からゲームを解説するナレーターがいるというのが非常に新鮮で、多層的な構造が発生している。
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Coda氏は2011年を最後にもうゲームを作ることを辞めてしまっているらしいが、この作られたゲームというのが確かに変で、シューティングゲームなのに敵が一切出てこないものや、後ろ向きにしか歩くことのできない探索もの、ひたすら部屋の片付けを無限ループでやりつづけるもの、「あなたは入っています」と書かれた看板の横を通り過ぎるだけのもの、キューブ頭のマネキンと意味のない答弁を繰り返すだけのもの等、どれも殆どゲームの体を成していない謎なものばかりとなっている。Davey氏はその意味不明なゲーム群に言いようのない魅力を感じ、Codaがまたゲーム作りを再開してくれることを望んでいるらしく、なぜCodaがこれらのゲームを作ったのか、どこが素晴らしいか、新しいか、Codaが何を表現したかったのかということを自らの解釈でどんどんプレイヤーに説明していく。Screen-Shot-2016-01-09-at-23.05.50

Davey自身もゲーム開発者で、ゲームのデータを改造する技術も持っているようで、時には、Codaのゲーム内に本来は不可視のデータとして入っていた不思議なオブジェクト群を紹介して見せてくれたり、Codaのゲーム内で起こる「ただ1時間待つ」といった意味のない指示、過剰な部分をスキップさせて次をすぐ見せてくれたりする。

Screen-Shot-2016-01-05-at-14.23.00 DaveyはCodaのゲームがいかに示唆に富んだものであるのか、それを作ったCoda自身がどんな感情を抱いていたのかを詳細に語っていく。その語りを聞きながら、プレイヤーはCodaのゲームを一通りプレイする。Screen-Shot-2016-01-05-at-14.35.54

最終的に、Codaの2011年作の最後のゲームを紹介していく過程で、プレイヤーはCodaの断片的なメッセージを見つけ、なぜCodaがゲームを作らなくなったのかを、おぼろげながら知ることになる。 Screen-Shot-2016-01-05-at-15.02.21

あくまで個人的なものとして、意図の不明なゲームを作り続けたCodaと、それでもそれを唯一、共有された存在であった友人としてのDaveyと、その意図を解釈し、Codaの代わりに解説を発信しつづける代弁者としてのDaveyと、Daveyから紹介されるがままに、本来は公開されるはずでなかったCodaのゲームを遊ぶプレイヤーとで、関係性が複雑に混じりながら、いま自分がやっているゲームに対する印象が次々と操作されていく。  Screen-Shot-2016-01-05-at-14.50.56

意味のないものを意味ありげに語っていくことの可笑しさを皮肉ったような作品なのだが、Codaのゲームは、意味がないとはいえ、なぜか全体的に異様に悲しい雰囲気に満ちており、よく分からないのにプレイした価値があったと感じさせるものがある。(特に部屋の片付けを無限ループでしつづける作品)それはCodaの孤独を説明しつづけるナレーションが入っていたからなのか、ナレーションなしでもその強度があったのかどうか、分からない。その、行き着く先のない感覚がいつまでも残り続けることが素晴らしく面白かった。

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