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The art of dining

出張でロンドンへ来ていたT氏と食事をすることになり、せっかくなので面白い食事をということで、The art of diningというイベントに参加した。Experimental, Foodなどのワードでgoogleを検索していてたまたま見つけたのだが、不定期に、歴史的建造物の一室を使って、その建物の歴史と文化にちなんだ料理を楽しむという趣旨のもの…。

_DSC0013 _DSC0014今回の会場はロンドンの西部にあるOsterley Houseという巨大な邸宅だった。昔、東インド会社を経営していた一族の所有物で、今回の食事は東インド会社の貿易経路である日本、中国、シンガポール、インドなどにちなんだものになっていた。

from The art of dining website

from The art of dining website

相当な年代物であろう絵画が壁にずらりと並んだ荘厳なLong galleryという部屋に、一列の長いテーブルが設置され、その周りを折り紙のツルとか、100円ショップで買った正月飾りのようなものなどがチープなものが舞うようにデコレーションされていた。

この建物は18世紀に、新古典主義の建築家として知られたRobert Adamsによって改修された。長い時間をかけてひとつひとつの調度品まで吟味され、厳格なクラシック的様式美をもった空間に仕上げられ、それが現代まで丁寧に維持されてきたのだと思うが、ついにチープな折り紙、針金のアーチ、使い捨てのお祭り用装飾、レンタルの机と切りっぱなしの布のテーブルクロスの侵入を許した。Adam氏はもしかしたら泣いたり怒ったりしたかもしれないが、それは自分にとっては心地の良いものだった。「格」が少し落ちていないとどうにも落ち着かない。格を落とす程度、その妙味のおもしろさの方が気になる。

T氏を宿まで送っていって、お土産物などをいただいて、帰宅した。一年ぶりくらいだったが、変わらずに精力的に動かれているようで、もろもろ楽しい話を聞かせてもらった。

展示など

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tate britainにRichard Deacon(というイギリスの彫刻家。ターナー賞受賞者)の展示を観に行く。曲げ木を大胆に使ったうねるような彫刻や、鉄をボテッと大胆に塑像した彫刻がかなり面白かった。曲げ木の最小半径部分の、極端な力がかかって繊維がはじけながらも、折れる事なくカーブしていく感じとか、延べ鉄の表面の鈍いボコボコ感とか、人工的なのに、素材の生っぽさの迫力があった…。

from tate britain website

さらに同じtate britainでやっている「RUIN AND LUST」という廃墟をテーマとした企画展を見る。第二次世界大戦の時の、コンクリートの塊で作られたトーチカの写真がメインビジュアルとしてポスターに使われていて、あっと思って引き込まれた。

from tate website

時代をまたいで、様々な絵や写真が展示されていたが、Paul Nashという画家の絵も良かった。基本的にこのようにざっくりと色が塗られたシュルレアリズムの絵は好きなのだが、画面の中のオブジェクト群の弱い存在感の雰囲気がとてもよい。

さらに水上バスに乗り、川をまたいでtate modernのほうへも足を運ぶ。tate britainとtate modernをつなぐ水上バスがあることは知らなかったのだが、たまたま見つけたので、乗った。

_DSC0358 _DSC0352Richard Hamilton(というポップアートの巨匠の一人)の回顧展を見た。ポップアートは実際の製作物がどうこうというより、観念的に、あとその時代の文化的に価値があったというものがほとんどだと思うので、作品というより歴史として興味をもっている。あとポップアートの人は強烈な言葉を多くのこしているので、それも面白い。部屋のひとつに、マルセル・デュシャンの代表作「大ガラス」をこのハミルトン氏が丸々複製したものが置いてあり、「大ガラス」はデュシャンのメモに沿って製作すれば、誰でも複製出来るようになっていることを知った。

from tate website

Clapham Sainsbury’s superstore

以前から何度か前を通りかかって気になっていたClaphamのSainsbury’sに行ってみた。調べても誰の設計か正確には分からなかったのだが、以前、訪れたCamdenのSainsbury’s superstoreと同種のメカメカしい造形で、おそらく同じニコラス・グリムショウの設計だと思われる。明らかに違和感のある三角形のとんがりが面白い。

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エントランスはSainsbury’sロゴが意味なく三連発していて、遠慮のない形状が清々しい。_DSC0119 _DSC0109

全体的にテントっぽく、骨組みと表皮がはっきりと分離して分かる形状になっている。_DSC0115

調べによるとこの黒いパネル群はディスプレイで、当時、イギリス初の大規模屋外広告ディスプレイになる予定だったらしいが、一度も使われる事なく計画は散ったようだ。ディスプレイがそもそも入っているのかどうかすら良く分からなかった。

その後、South London Galleryに行き、Uri Aranというイスラエルの美術家の展示を見た。写真とかオブジェとか映像とかを使って何らかの物語を構成しているようだったが良くわからなかった。今回のものに限らず、いろいろな展示の解説文でよくNarrative(物語風な)という単語を見かける。

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更に帰宅途中、Kia Ovalというスタジアムの側を通りかかり、少し変わった形をしていたので近くに寄ってみた。帰宅後、調べたところによるとHOKという巨大な組織設計事務所の設計によるもので、設立者のひとりはGyo Obataという日系のアメリカ人で、エーロ・サーリネンの研究室で建築を学び、その後SOMで働き、その後HOKを立ち上げたようだ。

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Sainsbury’sにて鋳鉄製のグリルパンが安売りで13ポンドで売っていて、意味なく衝動的に購入していたので、それを使って適当に肉を焼き、食べた。実際においしく焼けて、フライパンで焼くよりおいしいような気もしたが、思い込みかも知れず良く分からない。

ビブリオテーク

引き続きパリにいた。

業務終了後、帰りの電車まで少し時間があったので、いくつかの建物を見た。

ブローニュの森(という伝統的に売春婦が多いことで知られている森らしい)の中に建設中の、フランク・ゲーリー設計によるルイヴィトン財団の現代美術館。まだ工事中だったが、外装はほぼ完成しているように見えた。

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その後、地下鉄を乗り継ぎ、ドミニク・ペロー設計のパリ国立図書館を見に行った。帰りの列車までの時間がギリギリで、10分しか見られず、中に入る時間なかったのだが、想像をはるかにこえる凄まじい美しさだった。建物の周りの空気の雰囲気が明らかに違っていて、現代的なのに、歴史的な静かな感じもあって、とにかくきれいで本当に驚いた。これは必ず、改めて訪れたいと、思った…。

_DSC9951 _DSC9953 _DSC9956 _DSC9955深夜に家に帰った。

JAP

昼頃、強い雨が降って雨上がりに虹が二重に出ていた。

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近々会社を去る同僚のためのプレゼントを買いに市内に行き、カード等を購入。その後、Parasol unit foundation of contemporary art galleryとWhite cube galleryに行く。White cubeのほうの展示はとても良く、Franz Ackermannという人のコラージュも色彩が強烈で気持ちが起きる感じがしたが、He Xiangyuという人の、革で作ったフニャフニャの戦車が非常に表情豊かで眺めていて飽きなかった。形状がだらけきっていてポンコツなのに、使っている革が妙に品が良く高級品のようなテクスチャで、よいギャップを醸しだしていた。

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夜、Troubadourというかつてボブ・ディラン等が演奏していたという、フォーク界では名のあるらしいパブへ行って食事を摂った後、地下のライブエリアで何かやっているようだったので、いくつかのバンド演奏を見る。今日は特にフォークと関係なく荒っぽいインディー・ロックをやっていた。特に音楽に関する感想はない。

_DSC9784今日と似たような週末を何日も過ごしたように思うが、こうして写真とともに簡素な文章で残していると、これらが典型的な都市生活で東京でもロンドンでも大して変わらないような気もしてくる。大都市ではどこかに行けば必ず何かをやっているので、こうして時間を潰していくのは苦もないことだ。

car boot sale など

朝、Ye氏とウィンブルドンのドッグレース場駐車場で開催されているカーブーツセール(フリーマーケット的なもの)に出かけるも、特に買うものもなく、退散し、その後リッチモンド公園などを案内するも、夏頃には確かに大量に居たはずの野生の鹿が一匹も見当たらず、退散する。

その後Ye氏とわかれ、自分は更にバタシーのカーブーツセールにも行ってみた。規模が結構大きいと聞いていたがあまりそうは感じず、また特に買うものもなく30分ほどで会場を後にした。そもそも何かを買う気もなかった。並べられた様々なものを見ていて、きれいだとか面白いとか感じるものも無くはなかったが、それを所有したところで、買った時点で満足して、その後の生活でそれらを愛でたりしないだろうという考えがリアリティある感じで浮かんでくるだけだった。周りは、活気にみちており様々な人々が物品の売り買いを楽しんでいた。_DSC9756 _DSC9757 _DSC9758

更にその後 SAATCHI GALLERYに行き、New Order 2という若手作家のグループ展を見た。何か全体的に表現も印象も軽いものが多かったのだが、なんとなくそれでもまだ重いような気がした。もっと使い捨てできるもののような軽いものがあると良いのだが…。

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童話

Camden townにあるニコラス・グリムショウ設計の建物を観に行った。機械的というか工業製品ぽい造形が特徴のイギリスの建築家の一人。建築生産効率などの観点から工業化を行っているというより、表現としてこういう感じを好んでいるようだ。この人は幼少時代、模型少年だったらしいが、コンクリートみたいな流動的な要素がなくて、パーツをカチャカチャ組み立てると出来上がるこういう建造物の図面を書くのは楽しかったのではないかと思われる。一般的にも多くの建物はプラモデルのように、細かなパーツを組み立てて出来上がるわけだけれど、意外と、仕上げという工程によってパーツ自体は見えなくなるケースが多い。この人にとっては、「組み上がった感」が感じられないと意味がなかっただろうから、個別のパーツが完成後もはっきりと見えていることが重要だったと思われる。

Grand Union Walk Housing (1988)

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Sainsbury’s superstore (1988)

上の住宅のすぐ裏にある。イギリスの大手スーパーチェーンSainsburyの大規模店舗。すごく思い切っている感じがして清々しい。

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ゴツゴツした鋼のフライング・バットレスが外部に何本も露出している割には、内部空間にもチョコチョコと柱がある。周辺を全て古い建物に囲まれていたら、異質感がもっとすごくて面白かったかもしれないが、周囲の建物からそんなに浮いている感じはしなかった。

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さらにダニエル・リベスキンドのLondon Metropolitan university graduate centre (2004)も見に行った。中に入れなかったこともあったが、意外と小さくて、迫力に欠けた。ベルリンのユダヤ博物館とか、富山県のアウトサイドラインを見た時は非常にやばい感じがしたが…。

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すぐ隣の建物はバルコニー部分が歯のように飛び出していた。

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Where is my mind

昼、何故か自分以外に客が誰もいないパブでピザを食べる。ここのピザは安くておいしいので好きなのだが、なぜ今日はこんなに客がいないのか、分からない。ピザを食べ終わって店を出るまで、誰も客が来ずずっと一人だった。こちらの店員の方々は、客のことなどあまりおかまいなしに雑談等しているので、このような孤独な状況になっても特に気まずさもないので良い。Death by cheese(チーズによる死)という名前のピザを食べた。

その後、Tate Britain(という美術館)に行く。ターナーやウィリアム・ブレイクの絵、ヘンリー・ムーアの彫刻など見た。3週間程前に、tateのメンバーシップ会員になったので、企画展もフリーで見られた。

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その後スーパーに寄って帰宅。イギリスの街の写真を載せろというリクエストがあったので、何枚か載せます。こういう感じのテラスハウスの一角に自分の家もあります。

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夜はサーモン等、焼いて食べ、kindleで漫画の新刊を何冊か読む。

Goodiepal

ロンドンにはレンタル自転車ステーションがあちこちにあり、ちょっとした移動に重宝しているのだが、最近、そのステーションの設置場所が拡大され、家の近くにもレンタル自転車ステーションが出来た。何となく、その自転車を使用し、市内に出かけてみた…。

Salone squareへ。クリスマスの買い物か、多くの人でにぎわっていた。路上でサンタの衣装を来たバンドがピンク・フロイドの曲をやっていた。

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SAACHI galleryへ行く。ここの展示はだいたいいつもはずれが無い。今回はBODY LANGUAGEという企画展で、身体をモチーフにした作品を集めたものだった。絵画中心だったが、どれも非常によかった。

Henry Taylor 塗り方がホッパーのようにざくざくとしていて好きだった。

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Makiko Kudo

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Kasper Kovitz イベリコ豚で彫刻が作られている。

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さらにチャリで移動し、Hyde parkのSerpentine sackler galleryに行った。何をやっているか全く知らずに行ったが、Jake and Dinos Chapmanという人の展示で、入るなりいきなり、ナチスと骸骨とマックのドナルドが凄惨な殺し合いをしている様子を表した巨大なジオラマ模型がいくつも置いてあった。10000体をゆうに超えるであろう数の惨殺された人形で巨大な箱の中が埋め尽くされていた…。基本的に、何か怪しいカルト宗教のような世界観が展開されている展示で、グロテスクなものが多く、生理的な気持ち悪さを直球で狙ってくるようなものばかりで、少しきつかった。ただ表現の強度はあった。

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その後ハイドパークを散策。

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クリスマス期間のみ、ハイドパークにはWInter wonderlandという巨大な移動式遊園地が来ており、そこが多くの家族連れなどでにぎわっていた。入るのに相当、並ぶようだったので中には入らなかったが、かなり大掛かりなアトラクションががんがん建てられており、よくこんなものを仮設で建てられるなと思った。どういう設計になっているのだろうか…。基本的に絶叫マシンが多いのか、塀の向こうからは悲鳴が聞こえてくるばかりで、きらびやかなネオンの光など、視覚情報をのぞいて、音声だけ聞いたとしたら何やら不穏な感じがしたのではと思う。

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いったん家に帰り、改めて夜はCafe OTOに行って、Goodiepalという、電子音楽の作曲家のライブを見た。これが完全に意味不明の演奏で、演奏しているより何か喋っている時間の方が長く、また、やっと始まったと思った演奏も、ドライアイスから発生する二酸化炭素をズルズル鼻で吸いまくりながらリコーダーを吹く等、謎だった。氏の独自の作曲理論をまとめた本を読みながら、それを実演するような形だったっぽいが、ほとんど音楽として成立しておらず、長時間きくのは辛かった。最後は、この曲は良くないから、もう止めようと言って、途中で演奏を止めてそのままライブは終了した…。自分はずっと、このライブ早く終わらないかなと思っていたので、ちょうどよかった。

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きれいにしろ

昨夜意味なく夜更かしして本など読んでおり、明けがたに眠りについてから、昼過ぎまで意味なくだらだらと眠ったり起きたりを繰り返していた。近所の軽食屋で昼食としてハンバーガーを食べ、その後散歩がてら、近所にあって一度も行ったことが無かったWandsworth museumというローカルな美術館に行ってみた。

Wandsworth(という自分の住んでいる地域)の歴史がもろもろ紹介されており、その中に、第二次世界大戦時に爆撃された地域をプロットしたマップがあった。それによると、自分の家のところは、最も激しく爆撃された地域の一つとのことだった。先日、雨漏りの検査に来た修理屋が、この家は100年くらい経っているかもしれないと言っていたが、この地図の情報によると大戦時に完全に破壊されているはずなので、100年は経っていないことになる。

他にも企画展として、Keep it clean – a grubby history Wandsworth and London というものをやっていて、Wandsworthに昔、あった大衆浴場の話や、洗濯機およびクリーニング屋の歴史、などが紹介されていて非常に地味な展示ながらも割と面白かった。