出張でロンドンへ来ていたT氏と食事をすることになり、せっかくなので面白い食事をということで、The art of diningというイベントに参加した。Experimental, Foodなどのワードでgoogleを検索していてたまたま見つけたのだが、不定期に、歴史的建造物の一室を使って、その建物の歴史と文化にちなんだ料理を楽しむという趣旨のもの…。
今回の会場はロンドンの西部にあるOsterley Houseという巨大な邸宅だった。昔、東インド会社を経営していた一族の所有物で、今回の食事は東インド会社の貿易経路である日本、中国、シンガポール、インドなどにちなんだものになっていた。
相当な年代物であろう絵画が壁にずらりと並んだ荘厳なLong galleryという部屋に、一列の長いテーブルが設置され、その周りを折り紙のツルとか、100円ショップで買った正月飾りのようなものなどがチープなものが舞うようにデコレーションされていた。
この建物は18世紀に、新古典主義の建築家として知られたRobert Adamsによって改修された。長い時間をかけてひとつひとつの調度品まで吟味され、厳格なクラシック的様式美をもった空間に仕上げられ、それが現代まで丁寧に維持されてきたのだと思うが、ついにチープな折り紙、針金のアーチ、使い捨てのお祭り用装飾、レンタルの机と切りっぱなしの布のテーブルクロスの侵入を許した。Adam氏はもしかしたら泣いたり怒ったりしたかもしれないが、それは自分にとっては心地の良いものだった。「格」が少し落ちていないとどうにも落ち着かない。格を落とす程度、その妙味のおもしろさの方が気になる。
T氏を宿まで送っていって、お土産物などをいただいて、帰宅した。一年ぶりくらいだったが、変わらずに精力的に動かれているようで、もろもろ楽しい話を聞かせてもらった。