Dear Esther

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Dear Estherという割と評価の高いウォーキングゲームがセールで、1.7ポンドくらいというペットボトルジュースと同レベルの価格で売られていたので購入し、プレイした。

異常にグラフィックが美しい荒涼とした悲しげな風景の中を、主人公の独白を聞きながらただ歩いて進んでいくだけというゲームで、いわゆる敵が出てきたり、パズルを解いたりといった要素は一切、ない。物語の分岐もなく、多少の進路の枝分かれはあるが、大きな筋道は完全に一本道となっており、1時間半くらいで最後までたどり着く。

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ゲーム性が一切ないにもかかわらず、描かれる風景があまりに感傷的で完全に自分の好みに直撃するものがあり、心地よく没頭することができた。何度も挟まれる独白は、エスターという女性に向けた手紙の形式を借りており、底の抜けた船、バックミラーにだけ映ってたどり着けない場所、低く飛ぶカモメといった、不明瞭な比喩を多用しながら、ある島のこと、交通事故のこと、後悔や懺悔、友人のことなどが断片的に語られていく。

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何度もやりこんで上手くなっていったり、クリアに50時間もかかったりするような壮大なゲームはやる前から疲れてしまって出来ないので、このように1-2時間で楽しめる映画のようなゲームが今の自分には、とてもよく響く。

電車

昨日、今日とベルリンにいた。昼頃の便で帰ってきて、いったん職場に戻り、その後は通常どおり勤務していた。空港から直接、タクシーで来たために、車がなく、家までは電車で帰った。たまたま同僚の人と一緒になり、話しながら帰った。

食べ物

夜に人と待ち合わせてラーメンを食べに行った。外の雨の勢いは強くはなかったが、風の勢いがとても強く、嵐が来ているようだった。場所を変えてパブで1杯だけビールを飲んで、帰る頃には風と雨は止んでいた。行ったラーメン屋というのは一風堂だったので、風が何となく気になった。

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今日は家に何人かが来て談笑していた。人が家に来るのは身内などを除けば極めて珍しいことだった。もろもろの話をし、深夜まで過ごす。そのうちのひとりのかたは今週末にも帰国してしまうので、寂しく感じた。

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画像は最近現れたバグ画像。

ニート

部屋の掃除などしていた。粘着のコロコロテープを大量に消費しながら無限にカーペット上を往復していた。いつだったか大学生の頃の教授が、自分は視力が弱くて風呂場の汚れに気づいておらず、気がつくとカビだらけの中に居たというような事を言っていたが、同様の現象が発生しており、寝室の床に髪の毛がかなり落ちている事に気づいていなかった。髪の毛がコロコロに幾重にも巻きついて、コロコロの皮を剥くのを妨害してきて、何度も変なふうに破れるので、それが全ての気力を奪っていく気がした。

蝉の声

先週末から今週末にかけて、8日間ほどニュージーランドに行く用事があった。片道の移動だけで26時間近くかかり、乗り換えの時間なども含めると30時間以上かかったので、長かった。南半球に行ったのは初めてだった。当たり前だが、季節は逆で、夏だった。

全く関係ないが、正月に実家に帰った際に、こんまり先生のスーパーベストセラー「人生がときめく片付けの魔法」が置いてあったので、読んだ。「ものを捨てるときは、ときめくかどうかで判断する」という謎すぎるフレーズは知っていたので、そのあまりに科学的でない響きに、方法論として、おそらく自分は全く対象外で、花畑的な感性を要求される難読書だと思っており、敬遠していたが、正直興味はあった。読んでみると、片付け指南書というか優れた自己啓発書となっており、面白かった。

こんまりメソッドでは基本的に、ものに別れを告げるタイミングを「耐用年数」でなく、「役目」で判断するという方法をとる。たとえば服について、昔のお気に入りで良く着ていたが、趣味や体型の変化で着なくなったものに対して、その時の自分をときめかせてくれたので、役目を終えた、と考え、たとえば店頭では気に入って買ったが、結局着なかったタンスの肥やしには、自分にはそれが似合わなかった事を分からせてくれたという役目を既に果たした、と考える。ものの寿命を、「役目」を与えることで一つ一つ、終わらせていく。

とにかく現在にへばり付いているものを、全て過去に置いてくることを目指している。先の「結局着なかった服」の例のように、いつか着て元を取ろうといった、過去の失敗を未来に精算させることを、こんまり氏は一切、許していない。

この、ものが役目を終え、過去に置かれるということは、人に、自分が変わっていっていることを自覚させる作用があるようだ。かつて気に入っていたものも、興味から外れ、絶対に必要だったはずのものも、いつのまにか無くて大丈夫になっている事がある。基本的に人は変化を嫌うが、ただ生活しているだけでも人は勝手に変化していってしまう。しかし物事を過去に置かない限り、対比が生まれず、現在の変化を実感することができない。多くの場合、ものごとは現在進行形の時ないしは未来に想定されている時、自分に何も語りかけない。過去に置かれた時のみ、今の自分にとってそれが何だったのかという、意味づけを与えることができる。

全体を通して、こんまり氏が言っている「魔法」というのは多分こういうことっぽいのだが、望む望まずに関わらず、人が変化していくことを自覚した人は、次の変化を恐れなくなる。どうせ変わってしまう事は仕方がないし、結果がどうあれ、それは必ず何らかの「役目」を果たすという認識に立った時、人は新しいことを始めることにあまり躊躇しなくなる。その作用を、人生がときめく魔法と称している。

それ自体はすでに既知の概念だろうとは思う。ただ、この本は、このようなマインドを作りだすために、片付けを機能的な儀式として用いられるような仕組みを解説しているように思え、「人は変われる」という、多くの自己啓発本のメインテーマに、「片付け」という観点から突っ込んでいったことが新鮮だったのではと思う。。。

それはどうあれ、読んでるそばから、ものを全て捨てまくりたいという衝動がなぜか知らないが確かに湧いてきたので、正月休みから戻ったら、片付け祭りを開催しようとその時、心に決めたが、イギリスに戻ってきても結局、何もしなかった。

Frei Otto

土曜ー月曜にかけてMunichに居た。

少しだけ自由になる時間があったので、いくつかの建物を見た。前日に偶然、現地に住む建築家の人と少し話をする機会があり、とりあえずフライ・オットーのミュンヘンオリンピックスタジアム群は見ておいたほうが良いとのことだったので、それを見に行った。

オリンピック公園のすぐ横にはBMWのヘッドクォーターがあり、コープ・ヒンメルブラウによる激しい造形のショールームがある。基本的にデコンストラクションの建築物は好きなので、現地に行く前までは、フライ・オットーよりこちらのほうが興味があったのだが、実際に見てみると、確かに造形は異常なものがあるのだが、あまり空間体験として面白みを感じなかった。しかし建物の端っこにある、時空が突然ゆがんだように捻れている部分は、意味ないのだが、設計者のやってやった感が前面に出ており、素晴らしいとも思う。

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このタワーはKarl Schwarzerという人の設計らしいが、このトウモロコシ的な佇まいはとても良いと感じた。BMWのロゴがよく似合っており、世界を征服したかのような誇大妄想的な表情が味わい深い気がする。

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そしてフライ・オットーのスタジアムは、想像していたよりずっと良かった。美しい緊張感でうねるテント屋根がとてもダイナミックに高低差のある大空間を生み出していた。特に、不定形に歪む屋根面や、温室のように透明なガラスで構築された壁面全てに、緻密に細い線材が張り巡らされていて、全てのものが脆くて薄いのに、それらが凍ったように完璧なテンションで静止している感じが素晴らしかった。基本的に、建物というのは静止しているものなのだが、これほど、全てのものが「止まっている」感じがするものはあまりない気がする。一本、骨を折れば全てがはじけそうなきれいな軽さがある。コンクリートで作られたグニャグニャした建物では、この凍結したような印象を出すことは難しいだろうと思う…。

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部分的に、ミュンヘンオリンピックのグラフィック・システムで使われた色彩計画の名残が残っていた。

45分ぐらいしか見る時間がなかったのが残念だったが、行っておいて良かった。

The Stanley Parable

先日、The Stanley parableというゲームをやった。このあいだのThe Beginner’s Guideと同じ作者によるもの。こちらのほうが制作された年度は早い。

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これもThe Beginner’s Guide同様に、基本的には一人称視点のウォーキングゲームなのだが、やはり、ナレーション音声が全編にわたって入っており、「スタンリーは左のドアに入った」とナレーションが入るところで、あえて右側に入るなど、与えられた筋書きと違う行動を取ることで、どんどん破綻をきたしていくストーリーラインを楽しむという趣旨のゲームになっている。プレイヤーが予定通りに進まないと、ナレーターが混乱し始め、最終的にはキレ出して説教のようなものが展開されたり、ストーリ上、最初に見てはいけないものを見てしまったりすると、これはネタバレだ!目をつぶってくれ!と取り乱し始めたりと、バリエーションが幅広い。普通にナレーション通りに操作すると、15分ほどで物語は完結する。

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The Beginner’s Guide同様に、多層的な物語の構造を持ったゲームなのだが、そのコンセプトの面白さもさることながら、基本ストーリーや、ステージの空間構成全体にやはり何となく、しょぼく、虚無的な雰囲気がずっと漂っているのがとても魅力的に感じる…。

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私の好きなバグ

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今日、現れたバグ画像は自分の好みによく合っていた。ちなみにこのような画像は一般的にグリッチ画像と呼ばれ、世界中に愛好家がいる。画像データの配列を意図的に破壊することで、独特の歪みを発生させ、その偶発的な歪みの美しさを愛でる。

上の画像は完全に意図せず、ソフトウェアのバグによって生成されたものだが、上述のように、意図的にデータ破壊を起こすこともできる。例えば下記の画像のバイナリ配列を一部破壊すると、

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このようになる。

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この画像は星屑のような謎の斑点が現れているのが面白いが、やや単調な気もする。

データの破壊の仕方は様々な方法があり、グリッチ専用のアプリケーション等もある。

Space oddity

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David Bowieが昨日、亡くなったというニュースが相当な頻度で繰り返されている。氏が生まれた町Brixtonには昨夜、多くのファンが追悼のために集まり、夜中まで代表曲を合唱するなどして過ごしたようだ。ニュース映像を見る限り、一種の祭りのような状態になっており、別れを惜しむというより単純に騒ぎに便乗しただけの人も多くいたと思う。

自分も完全にそういう人々の一員で、一夜明けた今日、伝説の人物の死というものについて少し見てみたく、全くファンでも無いにも関わらず、Brixtonに少し立ち寄ってみた。映像で見た昨夜のような群衆の姿はすでに無かったが、駅前の壁画の前で多くの人が写真を撮ったり、隣の壁にメッセージを書き付けたりしていた。自分もそれに紛れて、ひっきりなしに人が訪れては花を添え、しばらく立ち尽くして去っていくのを見ていた。特に何も感じることはなかったが、その後代表曲を聴き漁り、Space Oddityという曲が良いということを知った。
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