Ryeという町に行く。カメラの撮影モードが、何故かイラストレーションモード(撮影した画像をイラスト風に加工して記録するモード)になっており、全く気付かずに使っていたため、画像が全て意味なくイラスト調になってしまっていた…。
Ryeは小さな町だが、アンティーク屋がいくつもあったり、古い丸石を敷き詰めた坂道があったりと風情がある…。坂の上の教会にはクリスマスツリーが飾られていた。この教会には町を見渡せる展望台があり、登っていったが、雨と、吹き付ける冷たい風とで長くは居られず、ぐるりと周囲を見渡して塔内に逃げ込んだ。
3時過ぎくらいに町を見終わり、もう一カ所くらいどこかに寄れる時間がありそうだったため、そこから更に1時間ほどかけてBrightonに行った。ここは既に何回も来ている海辺の街で、海に架かる桟橋がまるごと遊園地になっているブライトン・ピアが有名だが、暗い時間帯にそれを見たのは初めてだった。現在、イギリスは夕方4時で真っ暗になるために、一日がとても短く感じる。ブライトン・ピアのまたたく電飾は、恐ろしい深さで暗い海と、波の轟音とのなかで異様なほど能天気にピカピカとしていて、典型的な悲哀があった。暖をとるため、皆、園内の屋内メダルゲームエリアに逃げ込んで、メダル押し出しゲーム等に興じており、それも同等の良い悲哀があった。あまりに寒すぎたため、ブライトンからはすぐに撤退した。
意図せずカメラがイラストモードになっていたために、ピアの写真はこのような謎の抽象的発光体として記録されていた。現実にはそこにあった寒々しい波や、叩き付けるような雨は映っておらず、細長い光る未来的な構造物が、無に吸い込まれていくような夢っぽい絵になっていた。銀河鉄道に乗れなかった者が、地上からそれを遠く見送るような辛さがあり悪くないと思った。